· 

生活保護基準引下げ違憲訴訟、名古屋地裁2020年6月25日敗訴判決を受けて

「私たちは負けない」宣言

国は、2013年から3度にわたって生活保護費の平均6.5パーセントの引下げを行いました。これに対して、この引き下げは健康で文化的な最低限度の生活を脅かすもので、憲法25条に違反すると考え、埼玉では30名を超える人たちが裁判を起こしました。そして、全国では1,000名を超える生活保護利用者が同様に裁判を起こし、立ち上がりました。

 

去る2020年6月25日、名古屋地方裁判所で全国で初めての判決がありました。

生活保護基準は、憲法25条が定める生存権を具体化する極めて重要なものですから、あくまで合理的な基礎資料(統計等の客観的な数値や専門的知見)によって算定されるべきであり、その決定にあたり政治的色彩を考慮することは許されません。

 

ところが、判決では、生活保護基準の引下げが自民党の政策の影響を受けものであるとしても、「生活保護の引き下げなどを内容とした自民党の政策は、国民感情や国の財政事情を踏まえたものであって厚生労働大臣が生活保護基準を改定するにあたり、これらの事情を考慮することが・・・明らか」でも「それをもって改定が違法であるということはできない」とし、生活保護基準の計算方式についても、多少問題点はあるものの不合理ではなく、厚生労働大臣の裁量権の範囲内であり違法ではない、として私たちの訴えを全面的に退けました。

 

「原告らは、経済的な制約のある中で、衣食住といった生活の基本的な部分や社会的活動に関して不自由を感じながら生活をしていることは認められる」と認めているにもかかわらず、引下が自民党の政策に基づくものであるとしても、同政策は国民感情や国の財政事情の反映であるから問題はないというくだりでは司法への幻滅を強くしました。三権分立を司法自らが投げ捨ててしまったかのようです。

 

翻って考えると、社会保障改悪、人権侵害の元凶が「自民党の政策である」ことを裁判所が認定したことにもなります。「国民感情」なるものについて考えると、科学的に決定されるべき保護基準の判断材料に目に見えない「国民感情」を根拠にできるものではありません。むしろ、この背景にあるような誤解や先入観を放置し生活保護引下げの口実にするような行政のあり方をただし、利用者の人権を守ることこそが司法の役割ではないのでしょうか。

 

司法の独立をかなぐり捨て、理論や論理を形骸化してしまう裁判所の存在を明らかにし、宣伝し、今後各地で同様の判決を出させないことが必要になります。また、政治を変えることも展望して運動をする必要性が見えました。そして、私たちの運動は歴史を前進させる大きな流れのひとつであることが一層はっきりしました。

 

生活保護基準は、他の社会保障制度や諸施策と連動するナショナルミニマム(国民的最低限)として国民生活に多大な影響を及ぼすものであり、安易な引下げは決して許されません。

 

名古屋地裁判決に対しては既に控訴をし、高裁での逆転判決に向けて動き出しています。さいたま地裁での生活保護基準引下げ違憲訴訟はこれからが正念場です。私たちは、これからも自信と確信をもって生活保護制度、ひいては、社会保障全般の改善のための運動を続けていきます。

 

私たちは負けません。それは勝つまで闘うからです。以上、宣言します。

 

2020年9月23日

生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会一同

ダウンロード
「私たちは負けない」宣言
NagoyaDeclaration.pdf
PDFファイル 435.9 KB