生活保護基準引下げ違憲訴訟 第19回期日
生活保護引下げは国際潮流にも反する
生活保護引下げは国際規約違反
2019年10月30日,第19回期日がさいたま地裁で行われました.この日,傍聴整理券を求めて76人が並びました.
裁判では,国際人権規約について,申ヘボン氏(国際法学者,青山学院大学教授)の意見書に基づいた準備書面を提出しました.
原告側は,以前にも生活保護引下げは国際人権規約違反だと主張してきました.それに対し国は,社会権規約委員会の一般的意見には拘束力がない,個人に対しての具体的権利を付与していない,と主張しました.これらに対し反論しました.
憲法98 条2項では,国は国際法規を遵守すべき,とあります.国際人権規約委員会の一般的意見に法的拘束力がないとしても無視してよいわけがありません.国は,生活保護基準の引下げが人権保障を後退させていないと主張するなら,その実証をすべきです.
制度改正には,①正当化する理由,②包括的な検討がされたか,③議論に影響を受ける集団(生活保護世帯)の参加はあったか,④差別なく措置されているか,⑤第3者機関からの意見があったか,といった項目の判断基準が示されています.
しかし,引き下げにあたって,生活保護利用者の参加もなく,また,特に母子世帯に引下げの影響が大きく差別的なものでした.そして,日本は先進国で唯一,国内の人権機関を持ちません.これらあらゆる面で満たしていません.
政治を変えていこう
裁判後の集会では,支援団体から応援メッセージを頂きました.
川嶋芳男さん(埼玉県社会保障推進協議会)は,「韓国では,給食費の無料化が実施されている.日本がこんな状況でよいのか.医療も,医師と医療費を削減し,赤字と医師不足で公立病院を再編統合しようとしている.日本の政治は,国民のことを一切考えていない.政治を変えていこう」と投げかけられました.
本田宏さん(NPO法人医療制度問題研究会)から,「医療費を削減するならベット数でしょうと上から言って来ている.誰のための社会保障なのか.あなたも私も安心して暮らせる社会保障を,連帯しながら運動を広げて行こう」と呼び掛けられました.
原告証人尋問を控えて
さいたま地裁での期日に先立ち,名古屋地裁では学者,専門家,原告の意見陳述が行われ,埼玉からも原告,弁護士,支援者らが傍聴に参加しました. 名古屋の報告をしつつ原告から発言がありました.
「名古屋地裁では,なぜ生活保護を受けたか,食費いくら,外食は何回,入浴は,浴槽に湯を張るのは何回,日常生活のあらゆることをしつこいくらい聞かれていた.本当に怒りを覚えるくらいの尋問だったのに,名古屋の原告の人は我慢してはっきり答えていた.本当に困った時に頼るのが生活保護.もし自分の子どもが困った時のことも思い,よいものにしていきたい」
「生活と健康を守る会の旅行にも参加してますよね,と国側の弁護士がわざわざ尋ねていた.少ないながらもお付き合いがないと楽しくないじゃないですか.なのに,それすら否定されるような感.埼玉でもこんな感じなのかと不安だけれど,弁護士さんと相談しながらやっていきたい」
10年,20年後,後悔しないために
「10 月から消費税が増税された.私たちの暮らしは一層苦しくなった.一日も早く政治を一掃して欲しい」
「被告側の弁護士も1年間なり生活保護世帯の生活をしてみればと言いたい.実際自分が病衣になったらどうなるか想像して,引下げが妥当かどうか考えて欲しい」
「10年後,20年後,なぜあの時声を挙げたくても挙げられなかった障害を持つ仲間を思って原告に立った.名古屋でも障害のある人が尋問に立ったが,被告側はわざわざ矛盾するようなことを引き出そうとしていた.弁護士さんと対策を考えながらやっていきたい」
埼玉では,現在のペースで,秋頃に原告の証人尋問が始まっていくと見込まれます.寺久保光良(生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会代表)さんより,「尻上がりに多くの人に集まってもらい,勝利集会が開けるようにしていきましょう」と締めくくられました.
名古屋地裁は,6月25日に判決が出されることになりました.運動で後押ししていきましょう.また,同日東京においても,何らかのアクションを起こしていく予定です.