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<第20号>くらしの最低保障引下げにNO!

生活保護基準引下げ違憲訴訟第18回期日

議論されずに削減 元専門部会部会長代理も「遺憾」

埋もれている「貧困」に目を向けて

7月3日,生活保護基準引下げ違憲訴訟第18 回期日がさいたま地裁で行われました.

 

裁判のアピールには,50人ほど集まって街頭宣伝に立ちました.今回は,ちらしをティッシュにいれて配ったところ,あっというまに渡し切ることができました.裁判の傍聴希望には89人が並びました.少し寂しくなってきています.

 

14時30分から裁判が始まりました.並行して,埼佛会館で集会を開きました.第1部では,裁判だけでなく「健康で文化的な生活」を守るために闘ってきた先人たちの歩みや,現在の日本の状況を共有する機会にもなっています.今回は,貧困によって餓死に至った人たちの実態についてDVDを視聴しました.

 

また,寺久保光良(生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会代表)さんが,DVDの内容を補足する形でお話ししました.DVDでは,京都と北九州での事例でしたが,生活保護を巡っての餓死事件は頻発していました.それも表沙汰になるのはごく一部.わが国の豊かさはどこにあるのだろうかと考えさせられます.

 

いのちを守る制度に

寺久保さんはまた,先日,「生活と健康を守る会」(生健会)と県との話し合いで出された50代の女性から寄せられた相談に触れられました.ご主人が病気で医者にかかりたい状態だったが無保険で,福祉事務所に窮状を訴えたところ「国民健康保険に入りなさい」という指導だけだったそうです.生健会が女性と同行して,ようやく生活保護が申請できましたが,ご主人は半年後にお亡くなりになってしまったそうです.もう少し早く医療にかかれればと悔やまれます.

 

今年4月から,生活保護でエアコン購入費用支給する制度ができましたが,対象が限られています.また,エアコンがあっても,電気代がかかるためエアコンをつけずに過ごすという人もたくさんいます.いのちを守る制度にしていく必要があります.

 

統計学から見てもおかしい

裁判を終えた後,原告,弁護団が合流し,当日の裁判の内容について報告がありました.

 

この日に提出した書面は2つ.1つは,2013年から始まった引下げの根拠とした「ゆがみ調整」について,国が反論したことに対しての再反論をしました.国はゆがみ調整の際に,生活扶助基準と低所得者層の消費支出の額を比較して,生活扶助基準の方が高いから調整し,結果的に総額90億円が削減されました.

 

所得階層の一番低い,第1十分位の低所得者層と比較したとのことでしたが,ここに生活保護世帯も含まれており,比較の仕方そのものが間違っているのではないかと,新薬の実験を例に指摘しました.2018 年からの引下げにはこの手法は用いられておらず,一貫性もありません.

 

もう1つは,生活保護に関する研究 では日本の第一人者で,政府の生活保護の在り方委員会や生活保護基準部会部会長代理を担った岩田正美さんの意見書も提出されました.

 

基準部会では,5年に一度生活保護基準の検証が行われていますが,具体的な方法論が欠如しているところに大きな問題があると強調.専門家からの観点で問題 を指摘する他,削減された額670億円のうち510億円を占める「デフレ調整」については,基準部会でまったく議論されておらず「遺憾」としています.

 

名古屋地裁では証人尋問が始まる

原告からは,「岩田先生などすごい味方ができた.私の仲間も応援に駆け付けてくれて嬉しい」

 

「物価が上がっている.生活にすごく響いている.これから先が心配.みなさんよろしくお願いいたします」

 

「普通に食べられるのが幸せ.10月からまた生活保護が下げられる.どれを削ったらいいのか,いつも思う.スーパーの棚を見て食べたい,と思っても我慢する.その生活からちょっとでも解放されたい」

 

「子どもが大学進学を希望している.奨学金を借りて45歳まで払わないとならない.大学に入れること自体が闘いの状況だ」

 

「物価が上がり,生活保護は下がり,二重三重の苦しみがある.全国でも力を合せ裁判に勝って,少しでも暮らしがよくなるといい」

 

名古屋地裁では,証人尋問も始まり,裁判も大詰めを迎えています.私たちの暮らしを守る裁判に,力を寄せて行きましょう.

 

いのちを守るアクションを!「生活保護基準引下げ違憲訴訟」

第20回口頭弁論期日

2020年2月12日(水)14:30~ さいたま地裁

*浦和駅前でアピール行動を行います(11:30~ 予定)

*傍聴には13:40までに並んでください.

*傍聴抽選後,応援・報告集会を行います(14:20~ 於 埼佛会館 予定)