生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会
代表 寺久保 光良
私たちは、2014年8月1日にさいたま地方裁判所に提訴された生活保護基準引下げ違憲訴訟の原告当事者を支援する団体である。
1 政府は、2017年12月18日、2018年10月から生活扶助基準を最大5%程度引下げ、母子加算、児童養育加算及び学習支援費をも削減する方針を示した。
しかし、2013年の生活扶助基準引下げに引き続くさらなる生活扶助基準の引下げは、生活保護利用者の生活実態を顧みないものであり、前回の基準引下げに対し全国各地で提起された違憲訴訟における審理や原告の声を無視するものであって、断じて容認することはできない。
2 今回の引下げは第1十分位という所得階層を10に分けた一番下(下位10%)の階層の消費水準に合わせて、生活扶助基準を引き下げるものである。
しかしながら、生活保護の捕捉率は2割程度にとどまっており、第1十分位層の中には、生活保護を利用せず生活保護基準以下の生活をしている人たちが大量に含まれている。そのため、その低所得者層との生活保護基準を比較すれば、生活保護基準の方が高くなるのは当然であって、この方式によれば、どこまでも下げ続ける「引下げスパイラル」を招くことになる。
本来、生活保護基準以下の生活をしている人たちに対しては生活保護の利用を促して生活保護の捕捉率を引き上げ、また、低所得者層に対しては最低賃金の大幅な引き上げ等の諸施策によって生活水準の底上げを図ることが政府の役割である。このような役割を果たさず、その結果として生じている低所得者層の生活水準に合わせるという手法には何らの合理性もなく、不当極まりないというほかない。
また、生活保護基準は、ナショナル・ミニマムという性質上、就学援助等の他の低所得者施策と連動し、生活保護を利用しない一般市民生活にも大きな影響を及ぼすものであるから、その改定は、本来、諸制度への影響をも精査し、幅広い国民的議論を踏まえるべきであるところ、今回の引下げ方針決定はあまりに拙速である。
3 そして、2013年からの生活扶助基準の引下げに対しては、埼玉において、33名の原告が違憲訴訟を闘っている。
原告らは、
「生活保護当事者に対する差別的な眼差しが急速に強まる中で、私にとっては、差別をしない、生活保護だからといって攻撃をしない人々との関わりがとても大切であるが、これ以上引下げがおこなわれたら、その人たちとの関わりも諦めなくてはならない」
「体調よりも節約、自尊心よりも節約。食事も光熱費も削り、多くのものを諦めてきた」
「家と命をつなぐためだけの買い出しと病院だけの生活。死んでないだけのような状態になるかもしれないと思うと、とても不安である」
と声を上げ、生活が苦しく、厳しい現状を述べている。
4 今回の引下げ方針は、このような生活保護利用者の生活実態を顧みず、現在係属している訴訟における審理や原告の声を無視するものであって、さらなる生存権の侵害であるから、断固反対する。
以上