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<第16号>くらしの最低保障引下げにNO!

生活保護基準引下げの実態が明らかに

生活保護利用世帯の暮らしに関するアンケートから

提訴から3年目の夏を迎えて

去る7月26日(水)、生活保護引下げ違憲訴訟第11回期日がさいたま地裁で行われました。2015年8月1日に提訴し、3年目の夏を迎えました。期日開始時間を前に、浦和駅前では約50人がちらしを配り、アピールしました。

 

蒸し暑さの中、裁判所前には、傍聴券を求めて99人が並びました。14時からの裁判と並行し、応援集会を開催。開始にあたり、1年前の7月26日、同じ日に起きた「津久井やまゆり園」での殺傷事件で犠牲になった方へ黙とうを捧げました。この事件は、「いらない命」を決めつけ、まさに1人1人の尊厳を無視し生存権を奪う事件でした。事件で亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈りします。

 

生活保護引下げによる影響

今回の裁判では、厚生労働省が2010年に行った調査と、生活保護基準が引き下げられた後の2015年に行った調査を比較・分析し、引下げによる影響を訴えました。

 

厚生労働省による2010年調査では、生活保護世帯と一般世帯の生活水準とが比較されました。例えば、正月のお祝いについては、一般世帯が87.4%に対し、生活保護世帯が59.2%、冠婚葬祭への出席が、一般世帯が95.2%に対し、生活保護世帯が54.9%、であるなど、格差が浮き彫りになりました。

 

もう一つの調査は、生活保護引下げが実施された後の2015年に2010年調査と同じ項目で、全国の原告604人から回答を得、日本福祉大学の山田荘志郎氏が分析を行いました。これを2010年時の厚労省調査と比較すると、2015年の生活保護世帯の生活状況がさらに厳しくなっていることが明らかになりました。

 

特に、「新鮮な食材で調理する」は、2010年時の生活保護世帯と比べて30.3ポイント、「お正月のお祝い」は26.4ポイント、「冠婚葬祭に出席」は24.7ポイントと、引下げが行なわれた2015年時の生活保護世帯が低くなっています。食事を切り詰め、孤立せざるを得ない状況が浮き彫りになりました。

 

生きているのか,生かされているのか…

原告から一人ずつ感想が述べられました。

「引下げによってさらに苦しくなっている。身体とうまくつきあいながら闘っていきたい」

 

「毎日切り詰めてやっていくことは辛い。一人でポツンとなる。テレビをつければ、電気代かかると思って消したり、頭が計算機になってる感じ。生きているのか、生かされているのか…」

 

「今日、調査の結果を見て、自分は文化的な生活をしていないなあ、と改めて思った」

 

「最低生活ラインとは。生活保護受給者だけの問題だけでなく、一般の人たち、生活保護にならないように踏ん張っている人たちにも伝えていきたい」

 

誰もが尊厳ある人生を送れるように、そんな思いで裁判を闘っています。

 

【第10回 口頭弁論期日】

第10回目の口頭弁論期日は、5月17日(水)に行われました。浦和駅前で約50人がアピールに立ち、傍聴には123人が並びました。長い裁判ですが、関心の輪が広がっているようにも感じました。

 

この日の裁判では、生活保護基準の見直しについて、2013年1月に専門部会が報告書をまとめましたが、厚生労働省は部会に諮ることなく、この報告書の数値について2分の1にしました。減額の軽減緩和措置といいますが、減額された世帯だけでなく増額が見込まれる世帯も減額したのです。

 

この下がり幅は、8割以上の年齢層が本来では上げられるべきでしたが、結果、総額440億円以上削減がされました。客観的な数値や専門的知見の整合性がなく、不合理なものであると主張しました。

 

もう1つは、国が批准している国際人権規約の社会権規約について。社会権規約は「徐々に少しずつ実現すること」が明記されています。わが国も、少しずつ生活保護基準が上げられてきました。

社会権規約には生存権の実現のために、「制度後退禁止原則」がありますが、これを国は無視していると指摘しました。

 

第12回 口頭弁論期日

2017年11月8日(水) 14:00~ さいたま地裁

*一斉アピール行動11:00~浦和駅前 傍聴には13:30 までに並びましょう

*少し間があきますが,多くの人に呼び掛けていきましょう 

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くらしの最低保障引下げにNO!<第16号>
2017年9月12日
発行:生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会
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