第3回引下げの審査請求 364件
7月から住宅扶助の引下げも始まる
5月15日一斉審査請求行動 297件
今年4月に行われた3回目の生活保護の生活扶助基準の引下げに対し、埼玉県生活と健康を守る会連合会、きょうされん埼玉支部、反貧困ネットワーク埼玉などの支援団体により結成された「生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会」(以下、埼玉連絡会)が呼び掛け、5月15日、埼玉県内の生活保護利用世帯297世帯分の審査請求書を埼玉県に一斉に提出しました。
さいたま市浦和区の埼佛会館の2階ホールで行われ、生活保護利用者や支援者ら104名が集まり、会場は熱気で包まれました。
連絡会の寺久保光良代表と生活保護利用者から、埼玉県の職員に対し審査請求書と合わせて要望書を手渡し「国の方針に追従しないで欲しい」「国に対して生活保護基準の引き下げを行わず、撤回するように県として要望してほしい」などと訴えました。
社会との関わりが絶たれている
その後、集会が開かれました。生活保護利用者から「引き下げで生活が立ち行かない」「社会との関わりを絶たれている」などと切実な実態が出されました。また、7月から始まる住宅扶助の引下げに対する不安も出されました。
住宅扶助引下げに対し特例措置の周知を
住宅扶助基準の上限の引下げが7月から始まりました。埼玉県内では、1級地の6人世帯を除き全ての世帯で変更前以下の限度額になり、県内9万人以上の生活保護受給者の住生活に多大な影響が出ると考えらます。
特に、川越市の2人世帯では1万1000円、2級地(越谷市、熊谷市など)の2人世帯では1万円、3級地(久喜市、鴻巣市など)の2人世帯では9,900円の減額で全国の中でも最高水準の引下げ額で、さいたま市でも1人世帯が2,700円、2人世帯が8,000円、3~5人世帯が3,000円の減額となります。
基準額を超える場合は転居指導の対象とされますが、次回の更新月までは従前の扶助額とされる経過措置や、転居によって通所や通院等が難しくなり自立の妨げになる恐れのある場合は、減額をされずに従前の基準額のままとなる特例措置があります。
埼玉連絡会では、これら特例措置を十分に周知し適用を勧めることなどを要望書にまとめ、6月18日に埼玉県とさいたま市に要望書を提出しました。また、各福祉事務所に対しても同要望を送付し働きかけました。
要望書
「(前略) 国は3年間にわたって10パーセントの保護基準引き下げを行い、一層、窮屈で肩身の狭い思いと心身の健康を保つことが難しい生活へと追い込まれています。これが「健康で文化的な最低限度の生活」と言えるのでしょうか?
私たちは贅沢を望んではいません。せめて子供達には肩身の狭い思いをせずに、すくすくと明るく育ってほしいと思います。友人や親戚の病気や不幸に対して少なからずの気持ちを示せるようにしたい。食材は栄養と嗜好を考えて購入したい。猛暑や酷寒の日には体調管理のために冷暖房のスイッチを入れたいということです。
また、たまには映画を観たい、時には喫茶店で美味しいコーヒーを飲みたい。お花の一鉢も買って部屋に飾りたいと思うことは贅沢でしょうか?
「健康で文化的な最低限度の生活」というのは、せめてそういうことではないでしょうか。
(中略)
日本の生活保護の捕捉率は20パーセントと言われ、いわゆる先進国の中でも最低のレベルとなっています。生活保護基準を引き下げるよりも先に、捕捉率を引き上げることこそ重要ではないでしょうか。それには財政問題があると言われますが、日本は少なくとも世界で3番目の経済大国です。その気になればやってできないことはありません。
そうしたことを望み、審査請求人は勇気を奮って声をあげました。
以上を踏まえ、私たちは審査請求の提出に当たって以下のことを強く要望します。
1. 審査請求の審査に当たって国の方針に追従することなく、「県民の命と暮らしを守る」姿勢に立ち、地方自治の本旨と県民、審査請求人の生活の現実を踏まえ「健康で文化的な生活保障」の観点で行うこと。
2. 審査請求人や現在係争中の原告に対して、嫌がらせや干渉、あるいはそう受け取れるような言動は慎むこと。その旨を各福祉事務所に周知すること。
3. 生活保護制度について、「県民の命と暮らしを守る」立場で、県民に対して正しい知識の普及、啓発に努め、生活保護の捕捉率を高めること。
4. 国に対して生活保護基準の引き下げを行わず、すぐに撤回するよう、また捕捉率を高める施策を講じるよう、埼玉県としても要望していただきたいこと。
*2015年4月の引下げに対する審査請求は、6月1日現在で364件にのぼっています。
6月8日には、2013年8月の引下げに対して3人が新たに追加提訴しました。2014年4月に行われた2回目の引下げに対する二次提訴の準備もしています。第一次提訴と合同で審議されるよう裁判所と調整しています。